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【想定外のコストに注意】中古倉庫の耐震診断と補強工事の費用相場とは?改修の判断基準をプロが解説

物流拠点や製造拠点として中古倉庫の取得を検討する企業が近年増加しています。
立地やコストの面で新築よりも優位に見える一方で、見落とされがちな大きなリスクが「耐震性の不足」です。
特に1981年以前の旧耐震基準で建てられた倉庫や、構造図面が不十分な物件を購入した場合、耐震診断・補強に数百万~数千万円単位のコストが発生するケースも少なくありません。
本記事では、建設マネジメントの視点から中古倉庫の耐震診断・補強における実務的な注意点と判断基準を解説します。
■ なぜ中古倉庫の耐震性が問題になるのか?
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1981年の耐震基準改正(新耐震)以前に建築された物件
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用途変更(例:工場→倉庫)で構造条件が変わる場合
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増築や大規模改修を伴う工事を検討している場合
上記に当てはまる倉庫は、建築確認時の構造安全性が現在の基準を満たしていない可能性があります。
特に、下記のような用途では「確認申請時に耐震性の再確認」が義務付けられる場合があります:
| 用途変更内容 | 耐震性再評価が必要なケース |
|---|---|
| 倉庫 → 工場 | 製造設備導入、作業員常駐の場合 |
| 倉庫 → 店舗 | 不特定多数の来場がある場合 |
| 増築・中2階新設 |
既存部分の構造再評価が必要 |
■ 耐震診断の流れと費用感
中古倉庫を取得後、まずは**「一次診断」または「精密診断」**を実施します。
構造種別(鉄骨造・RC造・S造など)により調査項目は異なりますが、主な流れは以下の通りです。
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図面・構造資料の確認(または作成)
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現地目視調査(クラック・腐食・劣化等)
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耐震指標(Is値)の算出
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補強が必要か否かの判定
| 内容 | 費用目安(税別) |
|---|---|
| 一次診断(簡易) | 約30〜50万円 |
| 精密診断(構造解析含む) | 約80〜150万円 |
| 補強設計 | 約50〜100万円 |
■ 補強工事の種類とコスト目安
診断の結果、Is値(構造安全性の指標)が不足している場合は耐震補強工事が必要になります。主な補強方法とコスト感は以下の通りです。
| 補強方法 | 内容 | コスト目安(㎡あたり) |
|---|---|---|
| ブレース補強 | 鉄骨ブレースを増設 | 約3〜6万円 |
| 耐震壁の追加 | 壁の増設・増厚 | 約4〜8万円 |
| 基礎補強 | 杭増設・耐圧版追加 | 約5〜10万円 |
| 接合部補強 | ボルト・プレート追加 |
約2〜5万円 |
✅ 延床面積1,000㎡を超える倉庫の場合、トータルで2,000〜5,000万円程度の補強費用になることも。
■ 改修 or 解体・建て替え?判断の3つの基準
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築年数が40年以上経過している
→ 設備劣化・建物寿命も考慮し、建て替え検討も視野に。 -
補強費用が取得費の50%を超える
→ 経済合理性から建て替えが有利な場合あり。 -
構造図面がない/再作成に多額の費用がかかる
→ 精密診断や補強設計が困難。リスク大。
■ 安さに飛びつく前に“耐震”をチェックせよ
中古倉庫は、取得コストの面で魅力的な選択肢ですが、見えないコストとして「耐震補強費用」が重くのしかかることがあります。
また、用途変更や増築を検討する際には、法的に耐震性能の再評価が求められるケースも多く、事前の把握が極めて重要です。
構造図がない、築年数が古い、用途変更を考えている――
そうした倉庫物件を検討する場合は、“物件価格+補強コスト”で総合的に判断する視点が求められます。





