AGECブログ
物流拠点の“都市回帰”がもたらす建設トレンド|狭小地・多層化・用途複合の最前線

かつては郊外やインターチェンジ周辺に集約されていた物流拠点が、近年“都市回帰”の流れを強めています。背景には、EC市場の拡大・即日配送ニーズ・人手不足といった社会的要因があり、企業はよりエンドユーザーに近い場所に物流機能を設ける必要性に迫られています。
この記事では、物流拠点の都市回帰がもたらす建設トレンドや、設計における注意点について解説します。
■ なぜ今、“都市回帰”なのか?
以下のような要因が重なり、物流施設の都市立地化が加速しています。
-
EC利用の定着化と即日配送ニーズの高まり
-
再配達削減のための「拠点分散戦略」
-
ドライバー・庫内作業員の人手不足 → 通勤利便性のある立地を重視
-
都市部の空き地・工場跡地の再活用が進む
結果として、都市部・住宅地に隣接するコンパクトな物流拠点の新築需要が増加しています。
■ 都市型物流施設に求められる建築的特徴
| 観点 | 求められる対応 |
|---|---|
| 敷地 | 狭小地対応・三角地や不整形地も活用 |
| 構造 | 2~4階建の多層化(垂直搬送設備が必須) |
| 利便性 | 都市部アクセス/生活道路との共存 |
| 機能性 | 保管+仕分け+出荷を1施設内に集約 |
| 騒音・振動 | 周辺住民への配慮(遮音・搬入時間制限など) |
■ 設計・建設における実務的ポイント
-
車両動線の工夫
-
敷地内でのトラック回転が難しいケースも多く、一方通行型レイアウトや機械式ターンテーブルの活用が有効
-
-
垂直動線の明確化
-
階ごとの機能分け(1F:入出庫、2F:仕分け、3F:保管など)と、垂直搬送機・エレベーターの配置計画が初期段階から必要
-
-
複合用途対応
-
上階を事務所や休憩室として活用するケースも増えており、用途地域・建築基準法に照らした混合用途設計が求められる
-
-
建築コストの圧縮手法
-
コンパクト設計でも必要設備が増えるため、構造形式(S造・RC造)や外壁仕上の選定がコストに直結
-
■ 注目される施設タイプ:マイクロフルフィルメントセンター(MFC)
都市型物流施設の中でも、特に注目されているのが**MFC(Micro Fulfillment Center)**です。
-
スーパーマーケットの裏・ビルの1階〜2階などに小規模倉庫を構築
-
数百〜数千SKUを保管し、EC注文をピッキング・出荷
-
配送業者やラストワンマイル専用の拠点としても活用
大規模施設とは異なるスピードと柔軟性が求められるため、設計・設備仕様も独特です。
■ 今後の展望と計画時のポイント
都市型物流施設の建設は、地価や条例の制約が多く自由度が低い一方で、“戦略性”が問われる分野です。
-
「自社で内製するのか?」「不動産会社と連携するのか?」
-
「賃貸用施設として第三者へ貸す前提か?」
-
「配送網との接続性をどう確保するか?」
こうした複合的な要件を整理しながら、設計・施工・運用までを一気通貫で計画することが、今後の都市型物流拠点の成功に繋がります。
物流拠点の“都市回帰”は、単なる立地選定の問題ではなく、企業の配送戦略・人材戦略・建築戦略すべてに直結するテーマです。都市部での施設開発は一筋縄ではいきませんが、トレンドを先取りした“攻めの倉庫戦略”こそが、次のビジネスを支える基盤となります。





