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2026年以降の工場・倉庫建設で省エネ基準対応はどう変わる?

  • 2026.5.22

 

工場や倉庫を新築・増改築する際、省エネ基準への対応はこれまで以上に重要な検討項目になっています。2025年4月以降、原則としてすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務付けられました。工場や倉庫も例外ではなく、計画内容によっては建築確認や省エネ適合性判定の段階で、省エネ基準への適合を確認する必要があります。

さらに、2026年4月1日以降に省エネ適判を申請する中規模非住宅建築物については、省エネ基準が引き上げられています。延床面積300㎡以上2,000㎡未満の工場・倉庫計画では、これまで以上に早い段階から省エネ対応を検討する必要があります。

これまで省エネ対応は、事務所ビルや商業施設の課題として捉えられることもありました。しかし、工場・倉庫では照明、空調、換気、断熱、搬入口、冷凍冷蔵設備、太陽光発電、電力容量などが建築計画と密接に関係します。

本記事では、2026年以降の工場・倉庫建設において、省エネ基準対応がどのように変わるのか、発注者が確認すべきポイントを解説します。

 

2025年4月以降、省エネ基準適合は「一部の建物だけの対応」ではなくなった

大きな変更点は、2025年4月以降、原則としてすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられたことです。工場・倉庫の場合、建物の用途や規模、設備内容によって手続きや計算方法が変わりますが、発注者側としては「省エネ対応は後で考えるもの」ではなく、初期計画段階から確認すべき項目になったと考える必要があります。

特に、以下のような計画では早めの確認が重要です。

  • ・新築工場を計画する場合
  • ・新築倉庫・物流センターを計画する場合
  • ・既存工場を増築する場合
  • ・既存倉庫に事務所・作業室・冷蔵エリアを追加する場合
  • ・工場内に空調管理エリアやクリーンルームを設ける場合
  • ・冷凍冷蔵倉庫や温度管理倉庫を計画する場合
  • ・事務所、休憩室、更衣室、検品室などを併設する場合

省エネ基準への適合は、確認申請や省エネ適判のスケジュールにも関係します。そのため、設計が固まってから対応するのではなく、基本計画や基本設計の段階で省エネ性能を確認しておくことが重要です。

 

2026年4月1日以降、中規模非住宅建築物の基準が引き上げられている

2026年以降の大きなポイントは、延床面積300㎡以上2,000㎡未満の中規模非住宅建築物について、省エネ基準が引き上げられていることです。2025年度時点では、中規模非住宅建築物の一次エネルギー消費量基準は、用途を問わずBEI 1.00でした。しかし、2026年4月1日以降に省エネ適判を申請する中規模非住宅建築物については、建物用途ごとに基準値が分かれる形になっています。

2026年度水準では、主に以下のように整理されます。

建物用途 2026年度水準のBEI
工場等 0.75
事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等 0.80
病院等・飲食店等・集会所等 0.85

ここで注意したいのは、「病院等・飲食店等・集会所等はBEI 1.00」という情報と、「BEI 0.85」という情報が混在して見える点です。

これは、基準の時点が異なるためです。2025年度時点では、中規模非住宅建築物は用途を問わずBEI 1.00でした。一方で、2026年4月1日以降に省エネ適判を申請する中規模非住宅建築物では、病院等・飲食店等・集会所等はBEI 0.85の水準に引き上げられています。

そのため、工場・倉庫の記事でこの内容を説明する場合は、単に「病院等はBEI 0.85」と書くのではなく、「2026年4月1日以降に省エネ適判を申請する中規模非住宅建築物では」という前提を明記することが重要です。

なお、新基準が適用されるかどうかは、単に工事時期だけで判断するのではなく、省エネ適判の申請時期が重要になります。2026年4月1日以降に省エネ適判を申請する場合は新基準が適用され、施行日前に申請を行った場合は、原則として改正前の基準が適用されます。

 

工場・倉庫では「建物用途の整理」が重要になる

工場・倉庫建設でまず確認すべきなのは、建物用途の整理です。一口に工場・倉庫といっても、実際の建物にはさまざまな機能が含まれます。例えば、以下のような複合用途になることがあります。

  • ・製造エリア
  • ・保管エリア
  • ・荷捌きエリア
  • ・検品・梱包エリア
  • ・事務所
  • ・休憩室
  • ・更衣室
  • ・食堂
  • ・研究室
  • ・品質管理室
  • ・クリーンルーム
  • ・冷凍冷蔵エリア

省エネ計算では、建物用途や室用途によって評価対象や基準が変わる場合があります。特に、倉庫に事務所や作業室を併設する場合、単純な倉庫として整理できないことがあります。

また、倉庫・工場であっても、省エネ基準上は照明設備や昇降機設備が評価対象になる場合があります。用途名だけで対象外と判断するのではなく、実際の使い方や設備計画に応じて確認することが重要です。

 

常温倉庫だから必ず対象外、とは判断できない

工場・倉庫で注意したいのが、適用除外の考え方です。現行制度では、居室を有しないこと、または高い開放性を有することにより空気調和設備を設ける必要がないものとして定められる用途の建築物は、適合義務の適用除外となる場合があります。例として、自動車車庫、常温倉庫、神社、寺院等が挙げられます。

ただし、これは「倉庫ならすべて対象外」という意味ではありません。

例えば、以下のような場合は注意が必要です。

  • ・倉庫内に事務所や休憩室を設ける
  • ・検品室や作業室を設ける
  • ・空調設備を設置する
  • ・冷凍冷蔵設備を導入する
  • ・定温管理を行う
  • ・複数用途の建物になる
  • ・倉庫と工場が一体になっている

常温保管を行う倉庫であっても、建物全体の構成や設備内容によって判断が変わる場合があります。そのため、適用除外に該当するかどうかは、設計者や所管行政庁、省エネ適判機関に早めに確認することが必要です。

 

増改築では「増改築部分」が基準適合の対象になる

既存工場や既存倉庫を増改築する場合も、省エネ基準対応が関係します。2025年4月1日以降に増改築工事に着手する建築物は、増改築部分のみで省エネ基準適合が求められます。改正後は、既存建物全体ではなく、増改築部分が省エネ基準を満たす必要があります。

そのため、既存工場の一部増築や、倉庫への事務所棟追加、荷捌き場の増築などを行う場合は、増改築部分について省エネ基準への適合を確認する必要があります。

一方で、単なる空調設備の更新、修繕、模様替え、用途変更のみの場合は、新築または増改築に該当しない限り、省エネ基準適合義務の対象外となる場合があります。

ただし、実務上は「改修」なのか「増改築」なのか、「用途変更のみ」なのかによって手続きが変わるため、初期段階で整理しておくことが重要です。

 

工場・倉庫で省エネ対応に影響しやすい設計項目

工場・倉庫の省エネ対応では、単に計算上の数値を満たすだけでなく、建物の使い方に合わせて設計することが重要です。特に影響しやすい項目は以下の通りです。

 

1. 照明計画

工場や倉庫では、天井が高く、面積も大きいため、照明の消費電力が大きくなりやすい傾向があります。省エネ対応では、LED照明の採用だけでなく、作業エリアごとの照度設定、人感センサー、明るさセンサー、ゾーン制御、昼光利用なども検討対象になります。

倉庫では、保管エリア、ピッキングエリア、荷捌きエリア、検品エリアで必要な照度が異なります。すべてのエリアを同じ明るさで計画すると、過剰な照明計画になり、電力消費が増える可能性があります。

 

2. 空調・換気計画

食品工場、医薬品工場、精密工場、クリーンルーム、事務所併設倉庫などでは、空調・換気計画が省エネ性能に大きく影響します。特に、温度・湿度管理が必要な工場では、断熱性能、空調能力、換気量、排気量、外気負荷、設備発熱を一体で考える必要があります。

また、工場では生産設備からの発熱、排気、粉じん、臭気、湿気などが発生する場合があります。省エネだけを優先して換気量を抑えると、作業環境や品質管理に影響する可能性があるため、操業条件とのバランスが重要です。

 

3. 断熱・外皮計画

非住宅建築物では、住宅とは異なり一次エネルギー消費量基準が中心になりますが、建物の断熱性能は空調負荷に大きく関係します。住宅では外皮性能基準と一次エネルギー消費量基準の両方が求められますが、非住宅では主に一次エネルギー消費量基準への適合が求められます。ただし、工場・倉庫であっても、断熱性能は空調効率や運用コストに大きく影響します。

工場・倉庫では、屋根、外壁、シャッター、搬入口、庇、開口部などから熱の出入りが発生します。特に冷凍冷蔵倉庫や空調管理倉庫では、断熱性能や気密性が運用コストに直結します。

初期コストを抑えるために断熱仕様を下げると、完成後の電気代や空調負荷が大きくなる可能性があります。省エネ基準への適合だけでなく、長期的な運用コストも含めて検討することが重要です。

 

4. 搬入口・シャッター・トラックバース

工場・倉庫では、搬入口やトラックバースの計画も省エネに影響します。大型シャッターを頻繁に開閉する場合、外気の流入により空調負荷が増えることがあります。冷凍冷蔵倉庫では、前室、ドックシェルター、エアカーテン、断熱扉、開閉時間の管理などが重要になります。

省エネ対応を考える際は、建物の断熱性能だけでなく、実際の入出荷頻度や車両動線、作業時間帯も確認する必要があります。

 

5. 太陽光発電・蓄電池・自家消費

工場・倉庫は屋根面積が大きいため、太陽光発電の設置を検討しやすい建物です。省エネ計算上も、太陽光発電設備やコージェネレーション設備の発電量のうち、自家消費分が評価に含まれる場合があります。

ただし、太陽光発電を導入する場合は、屋根荷重、防水、メンテナンス動線、受変電設備、売電・自家消費の考え方、蓄電池の有無、BCP対策なども検討する必要があります。

単に「屋根に太陽光を載せる」だけでなく、建物構造や電気設備計画と一体で検討することが重要です。

 

省エネ基準対応はコスト増だけでなく、運用コスト削減にも関係する

省エネ基準対応というと、建設コストが上がるというイメージを持たれやすいかもしれません。確かに、高効率設備、断熱仕様、照明制御、空調設備、太陽光発電などを導入する場合、初期費用が増えることがあります。しかし、工場・倉庫では完成後の電気代や空調費も大きな負担になります。

特に以下のような施設では、運用コストの影響が大きくなります。

  • ・24時間稼働の工場
  • ・温度管理が必要な倉庫
  • ・冷凍冷蔵倉庫
  • ・クリーンルームを持つ工場
  • ・大型空調設備を持つ工場
  • ・高天井倉庫
  • ・照明点灯時間が長い物流施設

省エネ基準への適合は最低限の法対応ですが、発注者としては、建設費だけでなく、運用開始後のエネルギーコストも含めて判断することが重要です。

 

2030年を見据えた設計も重要になる

2026年以降の省エネ対応では、現在の基準を満たすだけでなく、2030年以降の基準強化も見据える必要があります。

省エネ基準については、遅くとも2030年度までにZEH・ZEB基準の水準まで引き上げられる方針が示されています。

つまり、2026年時点で建設する工場・倉庫は、将来的な省エネ基準や脱炭素対応を見据えた計画にしておくことが望ましいといえます。

例えば、以下のような対応が考えられます。

  • ・将来の太陽光発電設置を見据えた屋根構造
  • ・蓄電池やEV充電設備の導入余地
  • ・高効率空調設備への更新スペース
  • ・受変電設備の余力
  • ・エネルギー使用量の見える化
  • ・照明・空調のゾーン制御
  • ・将来増築時の省エネ対応

将来の基準強化に備えることで、増築や設備更新の際の手戻りを減らしやすくなります。

 

ライフサイクルカーボンへの対応も今後の論点になる

2026年以降は、省エネ基準だけでなく、建物のライフサイクル全体での脱炭素化も重要なテーマになっています。今後は、建築物の資材製造から解体までのライフサイクル全体の脱炭素化を促進するため、ライフサイクルカーボン評価に関する制度整備も進む可能性があります。

現時点では、工場・倉庫のすべてに直ちに同じ対応が求められるという意味ではありません。しかし、今後は建設時の省エネ性能だけでなく、建材、設備、施工、運用、解体まで含めた環境性能が評価される流れが強まる可能性があります。

そのため、工場・倉庫建設でも、以下のような視点を持つことが重要になります。

  • ・建設時のCO2排出量
  • ・建材や構造の選定
  • ・長寿命化
  • ・設備更新のしやすさ
  • ・運用時のエネルギー消費量
  • ・太陽光発電や再エネ活用
  • ・将来の改修・増築への対応

省エネ基準対応は、単なる確認申請上の手続きではなく、企業の脱炭素経営やBCP、運用コスト管理とも関係するテーマになりつつあります。

発注者が初期段階で確認すべき項目

工場・倉庫建設で省エネ基準対応を円滑に進めるためには、発注者側でも初期段階から必要情報を整理しておくことが重要です。特に確認したい項目は以下の通りです。

  • ・新築、増築、改築、改修のどれに該当するか
  • ・延床面積
  • ・省エネ適判の対象になるか
  • ・2026年4月1日以降の省エネ適判申請になるか
  • ・工場・倉庫・事務所などの用途区分
  • ・空調を行うエリアと行わないエリア
  • ・温度・湿度管理の必要性
  • ・冷凍冷蔵設備の有無
  • ・照明計画
  • ・昇降機設備の有無
  • ・太陽光発電や蓄電池の導入予定
  • ・将来の増築予定
  • ・省エネ計算に必要な設備情報
  • ・設計変更が発生した場合の再確認方法

省エネ基準への適合は、設計・設備・申請スケジュールに関係します。発注者側で用途や運用条件が整理されていないと、設計途中で手戻りが発生する可能性があります。

 

2026年以降の工場・倉庫建設では、省エネ基準対応がこれまで以上に重要になります。2025年4月以降、原則としてすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられ、工場・倉庫も計画内容に応じて対応が必要になります。

さらに、2026年4月1日以降に省エネ適判を申請する延床面積300㎡以上2,000㎡未満の中規模非住宅建築物については、省エネ基準が引き上げられています。2025年度時点では中規模非住宅建築物の基準は用途を問わずBEI 1.00でしたが、2026年度水準では、工場等はBEI 0.75、事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等はBEI 0.80、病院等・飲食店等・集会所等はBEI 0.85となります。

工場・倉庫では、照明、空調、換気、断熱、搬入口、冷凍冷蔵設備、太陽光発電、受変電設備などが省エネ性能に関係します。また、常温倉庫や改修工事などでは、適用除外や対象範囲の確認が必要になる場合もあります。省エネ基準対応は、単に法令を満たすためだけのものではありません。完成後の電気代、空調費、運用効率、BCP、脱炭素対応にも関係します。

工場・倉庫建設を検討する際は、土地選定や建物規模だけでなく、省エネ基準への適合、将来の基準強化、運用コストまで含めて、初期段階から建築計画と設備計画を一体で整理することが重要です。

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