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「設計図面は誰が描けるのか?」建築士法で変わる業務範囲と発注時の注意点

  • 2026.1.29

工場や倉庫などの建設プロジェクトでは、「誰がどこまで設計できるのか」「どの図面に建築士の資格が必要なのか」といった点が、発注者にとって分かりづらいポイントです。今回は、建築士法や建築基準法に基づき、設計業務の範囲と責任の所在について明確に解説します。

 

設計には段階がある|基本設計・実施設計・確認申請図書の違い

建築設計には大きく分けて以下の段階があります。

 

■ 基本設計

建物の用途や配置、面積、動線、ゾーニングなどを大まかにまとめる計画段階。
発注者の要望・予算をもとに構想を形にする作業で、建築士が担当することが一般的です。

※ただし、基本設計そのものは法的に建築士でなければならないとまでは定められていません。

 

■ 実施設計

構造・設備・仕上げ・納まりなど、詳細な仕様や寸法を図面化する段階。
見積取得や発注、施工の基礎資料となるため非常に重要です。

注意点:「実施設計図の作成自体」は建築士でなくとも可能ですが、実施設計図の一部が確認申請図書に含まれる場合、その部分は建築士でなければ作成・提出できません。

 

■ 確認申請図書

建築基準法第6条に基づき、特定の建築行為に際して提出が義務付けられている図面群です。
この申請図書の作成・提出は、法的に建築士の独占業務です(建築士法第3条・第3条の2)。

たとえば、以下のような建築物に該当する場合は、必ず建築士が関与しなければなりません。

  • ・木造:3階建以上、延べ面積300㎡超など

  • ・RC造・鉄骨造:2階建以上、または100㎡超のもの

  • ・特殊建築物(病院、集会場、工場、倉庫など)

 

設計者の資格|一級建築士・二級建築士・木造建築士の違い

設計できる建築物の規模は、建築士の資格によって異なります。

資格区分 設計可能な建築物
一級建築士 すべての建築物
二級建築士 主に中規模以下(木造2階建て、延べ500㎡程度まで)
木造建築士 木造2階建以下、延べ面積300㎡以下など(建築士法施行令第1条より)

 

設計と監理|法的な役割の混同に注意

発注者が混同しやすいのが、「設計監理」という言葉です。
日本の法制度上、正式な用語は「工事監理」であり、「設計監理」という表現は契約上の呼称にすぎません。

・工事監理(建築士法・建築基準法に基づく法定業務)
設計図通りに工事が行われているかを建築士が確認する業務。

設計監理(契約用語)
工事監理に加え、設計の一貫性維持やVE対応など、広義のマネジメントを指すこともありますが、法律上の義務ではありません。

 

設計施工一括方式(デザインビルド)の場合

設計と施工を同一企業が請け負う「設計施工一括方式」では、責任の所在が不明確になりやすい傾向があります。
ただし、確認申請図書を含む法定の設計業務については、必ず有資格の建築士が行う必要があるため、責任分担の明確化が重要です。

 

設計図面の「作成者」と「責任者」は同じとは限らない

建築プロジェクトにおいては、誰がどこまで設計するか、どの段階で建築士の関与が必要かを正しく理解することが非常に重要です。特に、確認申請を伴う図面については、建築士の資格と責任が明確に法律で定められているため、誤った理解による設計進行は重大な法令違反につながる可能性もあります。

発注者としては、「図面を描いた人=責任者」と単純に考えず、契約段階から業務範囲と責任を明示することが、安全で確実なプロジェクト推進のカギとなります。

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