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【コスト差は?】準耐火と耐火構造、どちらを選ぶべきか?防火区画の考え方と実務メリット

  • 2025.10.16

近年、工場や倉庫の建設において、防火性能の確保がますます重要視されています。特に、防火区画の設計や耐火構造の選定において、「準耐火で足りるのか?」「耐火構造にするとどれほどコストが上がるのか?」といった実務的な疑問を抱える担当者も多いのではないでしょうか。

この記事では、準耐火構造と耐火構造の違い・コスト・設計上のメリット/デメリットについて、実際の建設計画の現場目線から整理します。


 

■ 耐火性能の区分とは?

まず、建築基準法における耐火性能は以下の3つに大別されます。

種類 概要 主な用途
耐火構造 火災時に1時間以上耐えることが求められる構造。主要構造部すべてに耐火仕様が必要 高層建築物、大規模施設、密集地の建物
準耐火構造 30分〜1時間程度の耐火性能を持ち、主要構造部に一定の制限付き仕様を使用 中規模施設、地方の工場・倉庫など
防火構造 屋根・外壁等の防火性能を一部で確保する設計 小規模倉庫・仮設建物など

 


■ コスト比較:準耐火 vs 耐火構造

設計仕様により差はありますが、一般的に以下のような傾向があります。

  • 耐火構造にすることで、建物コストが10〜20%増加する

  • 特に鉄骨造の場合、被覆材(耐火被覆)や遮熱材の使用が増える

  • RC造では構造体自体が耐火性能を満たすため、比較的コスト差が少ないことも

例)

  • S造・2,000㎡の平屋倉庫を準耐火 → 耐火にすると、数百万〜数千万円の差が出る可能性あり

 


 

■ 選定時の判断ポイント

以下のような条件によって、どちらを採用すべきかが変わります:

判断条件 選択すべき構造
防火地域/準防火地域か? 耐火構造が原則(用途・規模により)
延焼ライン(隣地距離)に接しているか? 耐火・準耐火での外壁設計が必要
工場・倉庫の用途が危険物取扱・高温作業か? 耐火を推奨
コスト重視で、用途が一般的な保管倉庫 準耐火でも対応可能なケースが多い

 


■ 防火区画の設計における注意点

  • 防火区画とは、火災の延焼を最小限に抑えるための壁・天井等で仕切られた空間です。

  • 面積制限(1,000㎡) を超える場合、防火区画で分割が必要になる場合あり

  • 防火区画内の貫通配線・ダクト部分のシール処理にも細心の注意が必要

  • 高さ制限のある場所では、区画の位置によって物流動線に影響が出るため、設計段階での調整が不可欠

 


 

■ コストだけでなく「将来の使い方」も考慮

準耐火構造はコストを抑えやすい一方、用途変更や増築時に再度の確認申請・構造補強が必要になるケースがあります。

そのため、「今は準耐火で足りるが、将来的に危険物保管や高密度化を検討している」場合には、初めから耐火構造を選択しておくことで、将来的な改修・制限のリスクを軽減できます。

建物の規模・立地・用途・将来計画をトータルで見た上で、**「耐火にすべきか」「準耐火で十分か」**を判断することが、プロジェクト全体の最適化に繋がります。

設計の初期段階で、各構造のメリット・デメリットを明確に把握しておくことが、後悔しない建設計画を実現する鍵です。

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