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失敗しない工程表作成の5つのポイント

建設プロジェクトにおいて、工程表(スケジュール表)は単なる日程管理ツールではなく、現場の意思統一・資材手配・協力業者管理の要です。
しかし、現場で実際に問題となる工程表の多くは「誰にとっても分かりづらい」「実際の進行に合っていない」「変更履歴が追えない」といった課題を抱えています。
この記事では、工程表作成時に必ず押さえておくべき5つの基本ポイントを、建設実務の視点から解説します。
① 目的別に工程表を“使い分ける”
一つの工程表で全てをカバーするのではなく、目的・利用者に応じたフォーマット使い分けが重要です。
| 使用者 | 工程表の種類(例) |
|---|---|
| 建築主・経営層 | マスタースケジュール(大日程) |
| 現場監督・業者 | 詳細工程表(週次/日次レベル) |
| 設備業者・設計者 | 設備・内装別工程表(工種別) |
関係者全体に“どの工程が自分に関係あるのか”が一目でわかる設計がポイントです。
② 「未確定項目」は工程に組み込まない
発注時期未定、設計未確定、納品日未定など、不確定要素を含んだ工程を“仮で入れておく”のは危険です。
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未確定項目は色分けや注釈で明記する
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関係者との定期確認で“確定”へのアクションを促す
スケジュールの信頼性は“確定度の高さ”に比例します。
③ 工程ごとの“バッファ”を意識的に組み込む
建設現場では突発事象(雨天・災害・機器納入遅延など)がつきもの。**工程間に1日〜数日の余裕(バッファ)**を持たせることで、全体崩壊を防げます。
特に注意が必要な工程:
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地盤改良〜基礎着手の間
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設備納入〜内装仕上げの間
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工程最終週(是正・確認期間)
④ 工種ごとの“クリティカルパス”を明示する
多くの工程が同時並行で進む中、全体スケジュールを支配する“クリティカルパス”(遅れると全体が遅延する工程)を見える化することが重要です。
例:
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鉄骨建方 → 屋根 → 空調架台 → 室外機納入 → 試運転
この流れに支障が出ると、完了検査が遅れ、引き渡しが後ろ倒しになります。
⑤ 工程表の“更新と共有”ルールを整える
最も多いトラブルのひとつが、「古い工程表を元に動いていた」という情報齟齬。工程表の有効性を保つために:
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週1回の進捗レビュー+工程表更新を定例化
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更新履歴(バージョン管理)を残す
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工程表の共有範囲と更新ルールを事前に決める
■ 工程表は“動的管理ツール”である
工程表は作った時点で完結するものではなく、**日々の進捗や外的要因に応じて更新・調整すべき「生きた資料」**です。
だからこそ、
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目的に応じた使い分け
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未確定項目の管理
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バッファの確保
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クリティカルパスの意識
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共有と更新の仕組み作り
この5つを押さえることが、トラブルの予防とプロジェクト成功の鍵となります。
工程表を「管理者のための書類」にせず、関係者全体が意思統一のために“使いこなす”資料にすることが、本来の役割なのです。





