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【HACCP対応】冷凍冷蔵倉庫の温度帯別・断熱&導線設計のポイントとは?

食品の安全性と品質保持が求められる現代において、HACCP対応の冷凍冷蔵倉庫の設計は極めて重要な課題です。特に、温度帯別のゾーニング、断熱性能、結露対策、導線計画といった要素は、建築・設備の設計段階から高い専門性が求められます。
本記事では、「温度帯に応じた構造と動線計画の考え方」について、実務的な視点で解説します。
■ 冷凍冷蔵倉庫における温度帯の区分
食品物流で扱う温度帯は以下のように分類されます:
| 温度帯区分 | 目安温度 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 冷凍帯 | -25〜-18℃ | 冷凍食品・アイスなど |
| 冷蔵帯 | 0〜10℃ | 野菜・乳製品・精肉など |
| 常温帯 | 15〜25℃ | 飲料・常温保存可能品 |
それぞれの温度帯で断熱方法や使用建材が大きく異なり、区画ごとの空間構成が計画の肝になります。
■ 温度帯別の断熱・結露対策のポイント
冷凍帯(-25℃)の場合
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断熱パネル厚み:150mm以上が目安(ウレタンフォームなど)
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床断熱・防霜ヒーター必須(スラブ下部に)
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空気差による結露と霜付防止の二重扉+エアカーテンなど導入
冷蔵帯(5℃前後)
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断熱パネル厚み:75〜100mm
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一般的な結露対策に加え、湿度制御設備の導入も検討
常温帯との切り分け部
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温度差が生じる出入口部分で結露が集中
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段差設計(防水含む)+扉周辺のシーリング処理が重要
■ HACCPに準拠した導線設計の注意点
HACCPでは“交差汚染防止”の観点から、人・モノ・空気の導線分離が求められます。
以下は冷蔵倉庫における基本的な導線設計例:
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入荷 → 検品 → 冷蔵/冷凍保管 → 出荷前仕分け → 出荷という直線的な流れ
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冷凍帯から冷蔵帯への移動には**専用導線/中間室(緩衝ゾーン)**を設ける
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冷蔵庫内の作業スペースにも防滑素材の採用・安全導線確保が必須
加えて、清掃エリアと汚染エリアの区分・明確な標識と物理的遮断も計画段階から取り込む必要があります。
■ よくある設計ミスと回避策
| 設計ミス | リスク | 回避策 |
| 床断熱を軽視 | 結露・床面凍結による破損 | 初期段階で床仕様を確定 |
| 出入口に断熱性のない扉 | 温度損失・霜付 | 二重扉・エアカーテン導入 |
| 導線の交差 | HACCP違反・オペレーション混乱 | ゾーン分離を徹底 |
■ 性能・衛生・動線を統合的に考える設計を
HACCP対応の冷凍冷蔵倉庫は、単なる設備設計ではなく、温度管理・動線計画・構造仕様を一体で考える必要があります。
設計段階でのちょっとした見落としが、運用コストや品質事故に直結するため、温度帯ごとの建築的配慮・設備的対策を確実に押さえることが重要です。
将来的な増設や別用途転用の可能性も視野に入れつつ、「今必要な機能」と「長期的な使い勝手」を両立できる冷凍冷蔵倉庫を計画しましょう。





