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品質トラブルを防ぐ施工管理術 ― チェックリストで見る検査の流れと現場品質の守り方 ―

  • 2025.10.29

 

工場・倉庫・商業施設などの建設では、「竣工後に発覚する品質トラブル」 が最も避けたいリスクのひとつです。

「仕上がりにムラがある」「雨漏りが発生した」「設備が図面通りに収まらない」
これらの多くは施工中のチェック体制の不足が原因です。

本記事では、建設マネジメントの専門的な立場から、品質トラブルを未然に防ぐ施工管理術と、

実際の検査フローをチェックリスト形式で解説します。

 


 

■ なぜ施工中の品質管理が重要なのか?

品質トラブルの多くは、「完成後」ではなく「施工中」に生まれます。
原因は主に以下の3つです。

1. 設計意図の伝達不足
 現場担当者が設計図書の細部を把握できていない。

2. 中間検査の省略・簡略化
 “目視で大丈夫”と判断してチェックを省く。

3. 協力会社間の情報共有ミス
 複数業者の作業が重なり、納まり不良が発生。

これらを防ぐためには、**「工程×検査×記録」**を一体で管理する仕組みが必要です。
つまり、“感覚ではなくデータで品質を守る”という意識が求められます。

 


 

■ 施工管理における検査の基本ステップ

建設現場では、一般的に以下のような流れで品質検査が行われます。

区分 チェック内容 頻度
構造 鉄筋ピッチ・かぶり厚確認 各打設前
仕上 塗装・建具の仕上がり精度 工区ごと
設備 漏水・通電・動作確認 試運転時
記録 写真・測定データ・承認書類 各検査時
是正 不適合事項の対応履歴 随時更新

★これらの各工程でチェックを怠ると、
後工程で修正が必要になり、コスト・工期・信頼のすべてに影響します。

 


 

■ 品質チェックリストで見る「検査の流れ」

以下は、実際の現場で使用される品質チェックリストの一例です。

 

【共通チェック項目】

  • 図面・仕様書に基づく寸法・材料確認

  • 使用材料の製品証明・試験成績書の確認

  • 作業環境(温度・湿度・清掃)の適正化

  • 写真記録の撮影(進捗・納まり・仕上り)

 

【工程別ポイント】

🔹 鉄骨・鉄筋工事

  • 鉄筋径・配筋ピッチが設計通りか

  • 溶接部の外観検査・超音波検査

  • ボルト締付けトルク確認

🔹 コンクリート工事

  • 打設前の型枠・アンカー位置確認

  • スランプ・空気量試験値の記録

  • 打設後の養生・ひび割れ観察

🔹 仕上・内装工事

  • 下地処理・パテ・塗装回数の確認

  • 建具の建付け・開閉精度・隙間測定

  • 床の水平精度・タイル目地の通り

🔹 設備・電気工事

  • 配管ルート・支持金具の間隔確認

  • 絶縁抵抗測定・照度測定・換気性能試験

  • 試運転後の異音・漏水・温度データ確認

 

★すべての項目は「記録」として残す」ことが重要。
後から「施工ミスか、設計ミスか」を明確に証明できるよう、
写真・検査表・測定データをセットで管理します。

 


 

■ 品質トラブルを防ぐための3つのポイント

① 設計段階からの品質計画

施工段階で対処するのではなく、設計段階から品質確保の仕組みを作る
(例:詳細図・仕様書・材料指定を明確化)

② 第三者による検査・レビュー

現場担当だけでなく、外部CMや設計監理者によるダブルチェックが効果的。
ミスの早期発見率を大幅に高められます。

③ ICT・デジタル管理の活用

近年は、ドローン・3Dスキャナー・写真管理アプリなどを活用したDX施工管理が普及。
現場記録の共有・承認スピードを飛躍的に向上させます。

 


 

■ 品質トラブルを防ぐ「施工管理チェックリスト」例

区分 チェック内容 頻度
構造 鉄筋ピッチ・かぶり厚確認 各打設前
仕上 塗装・建具の仕上がり精度 工区ごと
設備 漏水・通電・動作確認 試運転時
記録 写真・測定データ・承認書類 各検査時
是正 不適合事項の対応履歴 随時更新

★このようなリストを「工区単位」「協力会社単位」で共有し、
チェック→是正→再確認のPDCAを回すことで、品質事故ゼロを目指せます。

 


 

■ 品質管理は“検査”ではなく“仕組み”で守る

観点 ポイント
品質管理の目的 不具合を未然に防ぎ、顧客満足度を高める
トラブルの原因 設計伝達・検査省略・情報共有ミス
対策 チェックリスト運用・第三者検査・記録管理
成功の鍵 計画的な品質保証体制(QMS)を構築すること

品質は「検査でつくるもの」ではなく、「仕組みで守るもの」。
現場ごとに異なる条件の中で、誰が見ても同じ品質を再現できる管理体制こそが、
真の施工管理力といえます。

当社では、工場・倉庫などの建設プロジェクトにおいて、
品質・工程・コストをトータルで管理する建設マネジメント(CM)サービスを提供しています。
品質確保の体制構築や現場改善のご相談もお気軽にお問い合わせください。

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