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防火地域における木造建築の現実的な選択肢とは?

都市計画区域内において「防火地域」または「準防火地域」に指定されているエリアでは、建築物の構造や仕様に厳しい制限が課せられます。とくに木造建築においては、「耐火性能」が大きなハードルとなるケースが多く、物流倉庫・工場の建設を検討する際には慎重な判断が求められます。
しかし、技術の進化や法改正により、防火地域においても一定条件下での木造建築が実現可能になりつつあります。本記事では、最新の制度・技術背景とともに、実務上の現実的な木造建築の選択肢について整理します。
■ 防火地域・準防火地域とは?
都市部の火災拡大リスクを抑制するため、建築物の防火性能を強化する目的で指定される区域。用途や階数、規模によって以下の構造要件が定められます。
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防火地域:原則として耐火建築物(例:RC造、S造耐火被覆)
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準防火地域:建物の規模によっては、準耐火建築物で可
■ 木造での対応が可能な条件
① 準耐火構造としての設計
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一定の設計基準を満たせば、木造でも「準耐火建築物」として認定可能
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例:45分準耐火構造、60分準耐火構造(告示仕様・性能認定品の活用)
② CLT構造や燃え止まり構造の採用
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厚板クロスラミネートパネル(CLT)を活用し、燃えしろ設計により燃焼進行を抑制
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国交省の「CLT建築設計マニュアル」等に準拠
③ 防火被覆材の活用
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石膏ボードやセメント板を内装・外装に適用し、法定耐火時間を満たす設計
■ 実務での留意点
● 構造材の認定取得
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防火構造認定(国土交通大臣認定)を取得した建材を選定すること
● 工期・コストの変化
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通常の木造よりも仕様が高度化するため、設計・施工コストは上昇
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施工会社・設計者の防火構造設計経験が成功の鍵に
● 地域行政の指導方針
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一部自治体では、独自の建築指導要綱により制限が強化されている場合あり
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事前に建築指導課と協議し、計画初期から折衝することが重要
■ 木造採用のメリットと将来性
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脱炭素・環境配慮:SDGs、ZEBなどの推進において木造は高評価
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補助金・優遇制度:国・自治体による「木材利用促進補助」など活用可能
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意匠性・ブランド性:木質空間による差別化・地域材活用による地域貢献
防火地域においても、建築基準法に準拠した高度な設計・仕様を満たすことで、木造建築は現実的な選択肢となり得ます。
ただし、それには専門的な知見と認定構造材の活用、そして行政との密な調整が不可欠です。
持続可能性や地域循環型経済の観点からも、木造建築の可能性は今後さらに広がると予想されます。建築初期段階から、構造・性能・コストを総合的に評価したうえでの慎重な判断が求められます。





