AGECブログ
EXPO 2025 大阪・関西万博に見る木造建築の新潮流
CM(コンストラクション・マネジメント)から見た意義と課題
2025年4月13日、夢洲(ゆめしま)で開幕した「大阪・関西万博」。
本万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、技術・文化・環境の交差点として世界の注目を集めています。
中でも建設業界で特筆すべきなのが、「大規模木造建築」の採用比率の高さです。
主催者施設・日本館をはじめ、複数のパビリオンやゲート施設に国産木材を活用した構造・意匠が導入されており、日本の建築文化とサステナビリティを象徴しています。
今回は、建設マネジメント(CM)の立場から見たEXPO 2025における木造建築の意義・特徴・課題について考察します。
✅ なぜ“木造”なのか?|EXPO 2025での採用背景
万博の基本構想では、以下の3つを大きな柱としています:
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サステナブルな資材の活用(CO₂削減)
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地元産業(林業・製材業)の活性化
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撤去可能な仮設性・再利用性
👉 これに最も適合した構造が**「木造建築」であり、仮設性と意匠性を兼ね備えたCLT(直交集成板)やLVL(単板積層材)といった構造用木質材料**が多用されています。
✅ EXPO会場に見る木造建築の特長(構造・意匠)
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日本館:格子組みの大規模木構造。日本の伝統的木組み技法と現代構造解析の融合。
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会場ゲート:CLTを活用したシンボリックな大屋根構造。来場者の第一印象を演出。
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飲食・休憩施設:国産杉・ヒノキを用いた仮設構造物。地域産木材の見える化。
CM視点では、**「構造躯体を意匠の一部として成立させる点」**が非常に高度で、施工品質・精度管理が成功のカギを握ります。
✅ CMから見る木造建築のメリット
項目 | 内容 |
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環境性 | 木材は炭素固定材。製造時のCO₂排出が少なく、環境貢献度が高い。 |
工期短縮 | 工場プレカット・ユニット化により施工の省力化・工期圧縮が可能。 |
意匠性 | 木目・温もり・和の演出が可能。海外来場者への文化的PR効果も。 |
リユース性 | 解体・再利用がしやすく、万博後の再資源化・移設にも対応。 |
👉 万博という**“仮設”でありながら“公共性が高い空間”**では、これらのメリットが特に活きます。
✅ 一方で課題も存在する
課題 | 解説 |
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耐火性能 | 木造は原則「不燃構造」との整合が必要。→ CLTは大臣認定取得必須。 |
耐候性・維持管理 | 風雨に晒される屋外構造では保護塗装・通気設計・点検体制が重要。 |
サプライチェーン | 国産材の需要集中により、地域によっては供給遅延・コスト上昇の可能性あり。 |
短工期対応 | 木材加工・乾燥・現場精度確保には高いマネジメント能力が要求される。 |
CMとしては、**「工場と現場の一体管理」「材料調達とスケジュールの事前統合」**が成功要素となります。
✅ 今後の建築プロジェクトへの示唆
EXPO 2025のような事例は、以下のような民間・公共施設への波及効果が期待されます:
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ロジスティクス施設や木造工場におけるZEB×木造の融合
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保育園・学校など公共建築物への非住宅木造の拡大
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工場倉庫の「サステナブル訴求」の一環としての構造用木材のブランディング利用
👉 「木=住宅」ではなく、「木=選べる構造形式の一つ」へという認識転換が、今後ますます重要になるでしょう。
🔍 EXPO 2025は“木造建築の社会実装ショーケース”
EXPO 2025は、単なる博覧会ではなく、日本の建設・資材・設計・施工技術がどこまで環境価値と融合できるかを示す場でもあります。
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✅ 木造建築は、サステナブル建築の先端を担う技術へ進化中
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✅ 建設マネジメントの視点では、「精度・調達・工程の3点管理」が重要
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✅ 万博後の社会実装フェーズに向け、ノウハウを共有することがCMの役割