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建設コストが上がり続ける理由と、CM活用でコスト削減できる仕組み

  • 2026.6.29

「5年前の予算感が、まったく通用しない」

工場や倉庫の建設を計画し、以前に近い規模の施設を建てた担当者に見積もりを見せると、こういう反応が返ってくることがあります。「桁が違う」「なぜこんなに高いのか」「施工会社がぼったくっているのでは」。

そう感じるのは無理もありません。しかし、現実として建設コストは過去5年で大幅に上昇しており、この傾向は当面続くと見られています。

本記事では、建設コストがなぜ上がり続けているのかを数字とともに整理し、そのうえで発注者がとりうる現実的な対策——とりわけCM(コンストラクションマネジメント)の活用がなぜコスト削減につながるのかを、具体的に解説します。

 

数字で見る:建設コストはどれだけ上がったか

まず現状を数字で把握しましょう。日本建設業連合会(日建連)の2025年12月版レポートによると、2021年1月と比較した建設資材物価は、建築部門で平均37%、土木部門で41%上昇しています。労務費(人件費)も2021年比で22.9%引き上げられており、資材費と労務費を合わせた全建設コストは、この約5年間で26〜30%上昇したと算定されています。

2026年4月時点では、建築費指数・建設資材物価指数ともに2015年比で約40〜50%上昇しており、土木部門では28か月連続でプラスが続いています。

具体的な資材を見ると、異形棒鋼(鉄筋)が54%、H形鋼(鉄骨)が46%、生コンクリートが69%、ストレートアスファルトが52%上昇しています(いずれも2021年比)。

「5年前の予算が通じない」のは、感覚ではなく事実です。

 

なぜ建設コストは上がり続けるのか

原因は一つではありません。複数の要因が重なり合って、コストを押し上げています。

 

原因① 資材価格の高騰——複合的なショックの連鎖

2020年以降、建設資材の価格は段階的に上昇してきました。

まず「ウッドショック」。コロナ禍でアメリカを中心に住宅建設需要が急増し、木材の需給バランスが崩れました。続いて「アイアンショック」。鉄鋼の世界的な需要増加と供給制約が重なり、鉄骨・鉄筋の価格が急騰しました。

さらに2022年以降はウクライナ情勢によりエネルギー価格と鉄鋼・セメントの供給が圧迫され、円安(2026年3月時点でもドル円は150〜160円台)が輸入資材のコストをさらに押し上げています。

日本はエネルギー資源の多くを輸入に依存しており、燃料費の上昇は資材の製造・加工・輸送コストにも広く波及します。

 

原因② 労務費の上昇——人手不足と賃上げの加速

建設現場で働く技能者の賃金は、2013年以降13年連続で上昇しています。2025年の公共工事設計労務単価(全国全職種平均)は1日24,852円で、2011年の13,047円と比較すると約1.9倍になっています。

背景には深刻な人手不足があります。2024年度の建設業就業者数は474万人で、そのうち55歳以上が36%を占める一方、29歳以下はわずか12%にとどまっています。技能者の高齢化と若手不足が重なり、貴重な人材を確保するために賃金を上げざるを得ない構造になっています。

2025年7月に日建連が公表した「建設業の長期ビジョン2.0」では、2026年度の賃上げ目標を7.0%と設定しており、労務費の上昇はまだ続く見通しです。

 

原因③ 建設需要の高止まり——供給が追いつかない

建設コストが上がっているにもかかわらず、需要は衰えていません。国内の建設投資額は2025年度に74兆円を超える見通しで、活況が続いています。

背景には大規模再開発、データセンターの急増、物流施設の新設ラッシュ、製造業の国内回帰などがあります。施工会社にとっては「選んで受ける」状況であり、見積もりが強気になるのは自然な流れです。建設市場はいまや「売り手市場」です。

 

原因④ 法規制の変化——コスト増が義務化されている

2025年から省エネ基準への適合が建築物に義務化されました。高性能断熱材・高効率設備の使用が求められるため、資材費が上乗せになります。

また、2024年4月から建設業にも時間外労働の罰則付き上限規制が適用されました。週休2日の定着が進む一方、稼働できる時間が減ったことで工期が長くなり、現場管理費・仮設費・重機リース費が増加しています。

法律が変わるたびに、建設コストは構造的に上がっていきます。

 

原因⑤ 工事費単価は「原価」以上に上がっている

ここは見落とされがちな点です。建設コストを構成するのは、資材費・労務費だけではありません。施工会社の利益・一般管理費・現場管理費なども含まれます。

2015年以降のデータを見ると、工事費単価(発注者が実際に払う金額)は、工事原価(資材費+労務費)よりも大きく上昇しています。つまり、施工会社が「売り手市場」の中で適正利益以上のマージンを乗せやすい状況になっているのです。

発注者が専門知識を持たずに見積もりを受け取ると、この「上乗せ」部分を見抜くことができません。

 

コストは下がらないが、「払いすぎ」は防げる

ここまで読んで、「じゃあ諦めるしかないのか」と感じた方もいるかもしれません。そうではありません。

建設コストが上がっているのは事実ですが、同じ建物を建てるときに「適正なコストで建てる発注者」と「不必要に高いコストを払ってしまう発注者」の差は、年々広がっています。

その差を生む最大の要因が、「発注プロセスに専門家の目が入っているかどうか」です。

 

CMを活用するとなぜコストが削減できるのか

CM(コンストラクションマネジメント)は、発注者の代理人として設計・施工の全体を管理する専門家です。CMがコスト削減につながる仕組みは、大きく5つあります。

 

仕組み① 設計段階のVEで、設計の「無駄」を削る

VE(バリューエンジニアリング)とは、品質・性能を落とさずにコストを下げる代替案を提示する手法です。

建物の設計は、最初の案がそのままコスト最適とは限りません。例えば「この壁の仕様を変えても機能は同じだが、コストは15%安くなる」「この工法より別の工法のほうが、工期が短く材料費も安い」といった提案が、CMから設計段階に出てきます。CMは設計会社にも施工会社にも利害関係がないため、純粋にコスト削減の観点で代替案を提示できます。設計変更が容易な段階で手を打てるため、効果が大きいのです。

 

仕組み② 競争入札の設計で、見積もりを適正化する

CMが介在すると、複数の施工会社に競争入札をさせることができます。ただし、入札を成功させるには「比較できる見積書をとる」ことが前提です。施工会社によって見積もりの積算方法・分類・単価の拾い方が異なると、金額の大小を単純に比較できません。

CMはすべての施工会社に同じ条件・同じ書式で見積もりを出させ、内訳を比較できる状態にします。これにより「安く見えるが実は条件が違う」「高いように見えるが実は品質が高い」という判断ができ、本当に有利な施工会社を選べます。

 

仕組み③ 見積書の精査で「水増し」を発見する

施工会社が提出する見積書は、通常数百から数千の項目で構成されています。専門知識がない発注者には、どの項目が適正でどの項目が割高なのかを判断する手立てがありません。

CMは、項目ごとの単価・数量・仕様を独自のデータベースと照合し、「この項目は市場単価より20%高い」「この数量は設計図より多く計上されている」という指摘を行います。その後、施工会社との交渉に立ち合い、発注者の立場で適正化を求めます。見積書の精査だけで、総工事費の5〜10%のコスト削減が見込まれるケースがあります。

 

仕組み④ 工程管理で「コスト増の連鎖」を防ぐ

工期の遅延は、そのままコスト増につながります。工期が延びると、現場管理費・仮設費・重機リース費・人件費がその分追加で発生します。CMは工程表を日常的にモニタリングし、遅延の予兆を早期に発見して対策を打ちます。また、設計変更が発生した場合、その変更がコストと工期にどう影響するかをすぐに試算し、発注者が判断できる情報を提供します。

変更管理がないプロジェクトでは、「気づいたら追加費用が積み上がっていた」という状況が起きやすくなります。

 

仕組み⑤ 発注方式の最適化で、構造的なコストを下げる

「誰に、どのように発注するか」というプロジェクトの組み立て方自体が、コストを大きく左右します。設計と施工を同一会社に一括発注する方式(設計施工一括方式)は手続きが簡単ですが、コストの透明性が低くなります。一方、設計・施工を分離してそれぞれ競争入札させる方式は、CMが調整機能を担うことで透明性が高まります。

プロジェクトの規模・複雑さ・スケジュールに合わせた最適な発注方式を設計段階から検討することが、トータルコストを抑える最も根本的なアプローチです。

 

CM費用と削減効果のバランス

「CMを使うとその分費用がかかるのでは」という疑問は自然です。CM報酬は一般的に工事費の2〜4%程度です。工事費が5億円であれば、CM報酬は1,000〜2,000万円の水準です。

一方、CMが介在することで期待できるコスト削減効果は、見積精査・VE・競争入札の設計を合わせると、工事費の5〜15%に及ぶケースがあります。5億円の工事であれば2,500〜7,500万円のコスト削減が見込まれます。CM報酬を差し引いても、コスト面でプラスになることが多いのが、数億円規模以上のプロジェクトでCMが活用される理由です。

項目 CM活用なし CM活用あり
見積もりの透明性 低い(内訳が見えない) 高い(項目ごとに精査)
設計段階のコスト最適化 なし VEによる代替案提案あり
競争入札の効果 比較しにくい 条件統一で公正に比較
工程遅延リスク 発見が遅れやすい 早期発見・対策
追加費用の管理 事後対応になりやすい 発生前に試算・判断

 

「コストを下げる」より「正しく払う」という発想へ

建設コストの上昇は、外部環境の変化によるものであり、発注者には直接コントロールできません。資材が高騰し、人件費が上がり、需要が増えている限り、坪単価が5年前に戻ることはないでしょう。しかし、「適正なコストで発注できているかどうか」は、発注者側の行動で変えられます。

同じ建物を建てるときに「知識がないから相場がわからず言われるままに払った」のか「専門家の目を入れて適正なコストを確認したうえで発注した」のかでは、最終的な支払い額に大きな差が出ます。

建設コストが上がっている今だからこそ、「払いすぎを防ぐための専門家」を活用するメリットは大きくなっています。

 

上昇要因 見通し
資材価格(鉄鋼・木材・コンクリート) 高止まりが続く見通し
労務費(職人の賃金) 2026年度も7%目標で上昇継続
建設需要 データセンター・物流施設・国内回帰で底堅い
法規制(省エネ・働き方改革) 構造的なコスト増として継続

建設コストが上がり続ける環境において、発注者にできることは「払いすぎを防ぐこと」です。CMを設計段階から活用することで、VE・見積精査・競争入札設計・工程管理を通じたコスト削減が現実的に可能です。

 

AGECは、工場・倉庫・物流施設の建設に特化したCM会社として、計画段階からのコスト管理・見積精査・発注支援を行っています。「施工会社の見積もりが適正かどうか判断したい」「VEでどれくらいコストを下げられるか試算してほしい」「これから建設を検討しているが、今の相場感を教えてほしい」——どのような段階のご相談にも対応します。

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