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BIM義務化で発注者は何を準備すべきか?2026年以降の建築申請の変化

  • 2026.6.22

 

建設プロジェクトの打ち合わせで、設計会社からBIMという言葉が出てきた。でも正直、よくわからないまま「はい」と返事をしてしまった——。

そういう経験をしている総務・経営企画担当者の方は、少なくないはずです。

BIMは設計者や施工者が使うツールであり、発注者側が深く知る必要はない。そう思われていることが多いのですが、2026年以降は、その認識を改める必要があります。

なぜなら、BIMに関する制度変更は、発注者側の「工期の組み方」「業者の選び方」「竣工後のデータ管理」にまで影響を及ぼすからです。

本記事では、建設の専門知識がなくても理解できるよう、BIM義務化の全体像と、発注者として今から取るべき行動を整理します。

 

まず「BIM」を30秒で理解する

BIMとは「Building Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」の略です。

一言でいうと、コンピュータ上に「建物の3Dデータベース」を作る仕組みです。

従来の設計では、平面図・立面図・断面図をそれぞれ別々に紙やPDFで管理していました。1枚の図面を変更すると、他の図面も手作業で修正が必要になり、ミスや抜け漏れが起きやすい状態でした。

BIMでは、建物をコンピュータ上で3次元モデルとして作成します。モデルを1か所変更するだけで、すべての図面に自動で反映されます。さらに寸法や建材だけでなく、コスト・工程・設備情報までひとつのモデルの中で管理できます。

項目 従来のCAD(2D) BIM(3D)
図面の作り方 平面・立面・断面を別々に作成 3Dモデルから自動生成
変更が発生したとき 全図面を手作業で修正 モデル変更で全図面に自動反映
管理できる情報 形状・寸法のみ コスト・工程・建材・設備も統合
ミスのリスク 図面間の不整合が起きやすい 整合性が自動で担保される

 

2026年から何が変わっているのか

国土交通省は、建築確認申請(建物を建てる前に行う法的な許可申請)のデジタル化を段階的に進めています。

建築確認申請とは: 建物を建てる前に「この設計は法律を満たしているか」を行政に確認してもらう手続きです。これがないと着工できません。

そのロードマップは次の通りです。

2025年(完了)
建築確認申請が紙からデジタル(PDF・オンライン提出)へ移行。図面の作り方はこれまで通りでよかった段階。

2026年4月〜(現在進行中)
BIM図面審査」がスタート。BIMソフトで作成した図面(PDF)に加え、3DモデルデータであるIFCデータも一緒に提出する方式が一部地域・案件から導入開始。

2027年
電子申請が全国すべての自治体に拡大。

2029年(予定)
BIMデータ審査」が全国で本格稼働。3Dモデルデータそのものが審査対象になる。これが実質的な「完全義務化」のゴール。

現時点(2026年)では、まだすべての案件でBIMが必須というわけではありません。ただし、2029年に向けて業界全体が急速にBIM対応へ移行しています。 今から動いておかないと、いざ必要になったときに対応できる業者が見つからない、という状況になりかねません。

 

発注者への影響:3つの変化

「BIMは設計・施工会社の話」というのは半分正解で、半分間違いです。制度変更は、発注者側の実務にも確実に影響します。

 

① 業者選定の判断軸が変わる

BIM対応できる設計事務所・施工会社と、そうでない会社の差が2026年以降に明確になっています。

大林組は2026年度に10件以上の案件をBIM図面審査で申請すると発表するなど、大手は対応を加速させています。一方で、BIMソフトを持っていない・使えるスタッフがいない会社も多く存在します。

発注者として確認すべきことは2点です。依頼予定の設計事務所・施工会社がBIM対応しているかどうか、そしてBIM対応に追加費用が発生するかどうかです。後者は見落としがちで、見積もりを依頼した後に「BIM対応費として別途〇〇万円」と提示されるケースが実際に起きています。

 

② 工期の組み方に注意が必要になる

BIM図面審査は審査の効率化を目的としていますが、2026〜2027年の移行期は注意が必要です。

審査機関側のBIM対応が地域によって異なること、BIM申請と従来申請が混在すること、新しい申請システムに関係者が慣れていないことなど、過渡期特有の混乱が想定されます。「BIMにしたから審査が早くなる」という期待だけでスケジュールを組むと、想定外の遅延につながる可能性があります。

現時点では、従来の工期感に2〜4週間のバッファを加えておくことを推奨します。

 

③ 竣工後のデータが「資産」になる

BIMの最大のメリットは、じつは竣工後にあります。

建物のBIMデータが手元にあれば、10年後に製造ラインを変えるための改修工事を計画するとき、設備の定期点検記録を整理するとき、省エネ報告書を作成するときに、図面を一から引き直す必要がありません。「建物のデジタルカルテ」として長く使い続けられます。

ただし、これは竣工時にBIMデータをきちんと受け取っておくことが前提です。何も指定せずに発注すると、施工会社がBIMデータを保管したまま、発注者側には紙の竣工図面しか渡されないケースが多くあります。

 

今から動いておくべき5つのこと

1. 依頼先にBIM対応状況を確認する

最初の打ち合わせで、次の3点を確認してください。

  • BIM対応ソフト(RevitやArchicadなど)を使っているか
  • BIM図面審査の申請実績があるか
  • IFCデータ(3Dモデルデータ)を竣工時に納品できるか

これを確認するだけで、後のトラブルをかなり減らせます。

 

2. スケジュールに「移行期バッファ」を入れる

2026〜2027年は制度の過渡期です。申請先の自治体や審査機関のBIM対応状況によって、審査にかかる時間が通常より長くなる場合があります。着工予定に間に合わせるため、余裕を持ったスケジュールを組んでおきましょう。

 

3. 契約書に「BIMデータの納品」を明記する

発注時の契約書または仕様書に、次の内容を入れておくことを強く推奨します。「竣工BIMデータをIFC形式で納品すること」「データの権利は発注者に帰属すること」「設計変更が生じた場合はデータを更新して納品すること」。

口頭での確認では後から「そんな約束はしていない」というトラブルになりやすい部分です。

 

4. 社内の「BIMデータ管理担当」を決めておく

BIMデータは一度受け取ったら終わりではありません。改修・増設・設備更新のたびに更新していくものです。総務・施設管理・情報システムのいずれかの部門が管理担当になり、データの保管場所・更新ルールを社内で決めておきましょう。

担当が決まっていないと、せっかくのデータがどこかのフォルダに眠ったまま活用されない、というケースが非常に多くあります。

 

5. わからない部分はCMに任せる

BIMに関する専門的な判断——業者選定の基準、データ仕様の取り決め、申請手続きの確認——は、コンストラクションマネジメント(CM)に委ねることが合理的です。

CMとは、発注者の代理人として設計・施工の全体を管理する専門家です。BIM対応の可否も含めて業者を評価し、発注者が適切なデータを受け取れるよう交渉・確認を行います。「専門的なことは任せながら、判断は自分でしたい」という発注者にとって、CMは最も有効な選択肢のひとつです。

 

工場・倉庫建設でBIMが特に効くポイント

工場や物流倉庫の建設は、オフィスビルや住宅と比べてBIMの効果が大きく出やすい分野です。

製造設備・排気ダクト・配管・電力インフラが複雑に絡み合う工場建築では、BIMによる3D上の事前干渉チェックが特に有効です。着工後に「配管と梁がぶつかる」「設備が搬入口を通らない」といった問題が発覚すると、解体・やり直しのコストと工期ロスが発生します。BIMであればそうした問題を設計段階で発見・修正できます。

また、製造ラインの変更や増産対応による増設・改修は、工場建築では定期的に発生します。BIMデータがあれば「既存の柱位置」「配管の経路」「壁の構造」を正確に把握した上で改修計画を立てられるため、調査費用と設計工数を大きく削減できます。

 

BIMの制度変更は、発注者にとっても他人事ではありません。業者選定・工期設計・契約内容・社内管理体制——これらすべてに影響が及びます。

タイミング 発注者が取るべきアクション
今すぐ 依頼先のBIM対応状況と追加費用を確認する
計画段階 スケジュールに2〜4週間のバッファを加える
契約時 BIMデータ納品・権利帰属を契約書に明記する
竣工後 社内のBIMデータ管理担当と保管場所を決める

2029年の完全義務化まで残り約3年。今から動き始めることで、制度変更に振り回されることなく、むしろBIMを自社の施設管理の武器として活用できます。

※本記事の制度情報は2026年6月時点のものです。国土交通省の方針変更等により内容が変わる場合があります。最新情報は国土交通省の公式発表をご確認ください。

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