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労務費に関する基準とは?発注者の見積・契約はどう変わるのか

建設費が上がる理由は資材価格だけではありません
「人件費が上がっているのは分かるが、なぜ建設費がここまで高くなるのか」工場や倉庫の建設を計画している企業担当者の方から、このような質問を受けることがあります。
近年の建設費上昇の背景には、資材価格の高騰だけではなく、建設業界で働く技能者へ適正な賃金を確保するための制度整備があります。その中心となるのが、改正建設業法に基づいて創設された「労務費に関する基準」です。
この制度は建設会社だけを対象としたものではありません。工場や倉庫を建設する発注者にとっても、見積の比較方法や契約の考え方に大きく影響する内容となっています。本記事では、「労務費に関する基準」とは何か、その背景と制度の概要、そして発注者が知っておくべきポイントについて解説します。
労務費に関する基準とは
「労務費に関する基準」とは、建設工事に従事する技能者へ適正な賃金が支払われるよう、改正建設業法に基づいて中央建設業審議会が作成・勧告する基準です。2025年12月には基準が作成・勧告され、改正建設業法の関連規定も施行されました。従来は価格競争の影響から、必要な労務費まで削減されるケースが見られました。総価一式契約では労務費の内訳が見えにくく、技能者への賃金確保が十分でないことが建設業界全体の課題となっていました。
その結果、
- ・技能者不足
- ・若手人材の減少
- ・建設品質への影響
- ・建設業の担い手不足
といった問題が深刻化しました。こうした状況を改善するため、公共工事・民間工事を問わず、受発注者間や元請・下請間の取引全体で適正な労務費を確保する仕組みとして、この制度が導入されています。
なお、公共工事と民間工事では契約形態や運用方法が異なる場合がありますが、適正な労務費を確保するという基本的な考え方は共通しています。
なぜ今、この制度が重要なのか
制度創設の背景には、建設業界を取り巻く環境の変化があります。
| 背景 | 発生している課題 |
|---|---|
| 人手不足 | 技能者の確保が難しくなっている |
| 高齢化 | 若手入職者の減少 |
| 資材価格高騰 | 建設費の上昇 |
| 働き方改革 | 長時間労働の見直し |
| 2024年問題 | 時間外労働の上限規制への対応 |
特に2024年4月からは、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。これまでのように長時間労働によって工期を短縮することが難しくなり、「適正工期」と「適正な労務費」を前提としたプロジェクト運営が求められています。
発注者にどのような影響があるのか
① 見積の考え方が変わる
従来は、「一番安い会社に依頼する」という考え方も少なくありませんでした。
しかし現在は、適正な労務費を確保できない見積では、
- ・品質管理
- ・工程管理
- ・安全管理
に影響が生じる可能性があります。また、経験豊富な施工会社ほど、採算が取れない案件への参加を見送るケースもあります。価格だけではなく、
- ・見積条件
- ・管理体制
- ・工程計画
- ・施工実績
まで含めて比較することが重要です。
② 「著しく低い労務費」を前提とした価格交渉は避ける
改正建設業法では、適正な労務費を確保することが制度の基本的な考え方となっています。施工会社に対して、適正な労務費を著しく下回るような見積変更を求めることは、制度の趣旨に反する取引となるおそれがあります。
なお、「著しく低い」と判断されるかどうかは、国土交通省が示す労務費に関する基準や工事内容などを踏まえ、個別の事案ごとに判断されます。
一定の要件に該当する場合には、改正建設業法に基づき、勧告やその内容の公表といった措置が講じられる仕組みが設けられています。
③ 契約内容の確認がより重要になる
契約では次の項目を確認しましょう。
| 確認項目 | チェックポイント |
|---|---|
| 工事範囲 | 含まれる工事は何か |
| 追加工事 | 変更時の費用負担 |
| 工期 | 現実的な工程になっているか |
| 労務費 | 適正な費用が見込まれているか |
契約内容が曖昧なまま着工すると、後工程で追加費用や工期延長につながるケースがあります。
④ 発注者にも適正な取引が求められる
近年の制度では、施工会社だけではなく発注者にも適切な取引が求められています。
例えば、
- ・著しく短い工期を求める
- ・適正な労務費を考慮しない価格交渉
- ・一方的な仕様変更
- ・契約内容が不明確な発注
などは、プロジェクト全体のリスクにつながる可能性があります。
工場・倉庫建設で発注者が意識したいポイント
チェックリスト
- □ 価格だけで施工会社を選ばない
- □ 適正な工期を確保する
- □ 見積条件を統一する
- □ 契約内容を十分確認する
- □ 設計変更時のルールを整理する
- □ 適正な労務費を前提とした見積になっているか確認する
改正前と改正後の違い
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 労務費 | 価格競争の影響を受けやすかった | 適正な労務費の確保を重視 |
| 工期 | 短工期を優先するケースもあった | 適正工期の確保を重視 |
| 見積比較 | 総額重視になりやすい | 条件・内容を含めた比較が重要 |
| 発注者 | 価格交渉が中心 | 適正な取引への対応が求められる |
CM(コンストラクションマネジメント)が重要になる理由
近年は、
- ・法改正への対応
- ・コスト管理
- ・適正工期
- ・労務費
- ・設備調整
など、発注者が判断すべき項目が増えています。
CMを活用することで、
- ・見積条件の統一による公平な比較
- ・労務費・工事範囲・工期を含めた総合的な見積分析
- ・契約条件や設計変更ルールの整理
- ・プロジェクト全体の工程管理
を第三者の立場から支援できます。
「労務費に関する基準」は、建設会社だけでなく発注者にも大きく関係する制度です。特に重要なのは次の4点です。
- ・適正な労務費を前提とした見積・契約が求められる
- ・極端な価格だけで施工会社を選ばない
- ・契約内容や工期を事前に明確にする
- ・発注者にも適正な取引が求められる
制度の趣旨を理解し、適切な契約と計画を進めることが、品質・コスト・スケジュールのバランスが取れた工場・倉庫建設につながります。
AGECでは、工場・倉庫・物流施設の建設において、発注者の立場からコンストラクションマネジメント(CM)を行っています。
- ・建設会社の見積比較
- ・契約内容の確認
- ・コスト管理
- ・スケジュール管理
- ・設計・施工の調整
など、計画初期から竣工まで一貫してサポートいたします。「見積内容が適正か判断できない」「施工会社の提案を客観的に比較したい」といった場合も、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年7月時点の制度・公表資料をもとに作成しています。法令や運用は改正される場合があります。実際の契約や見積にあたっては、最新の法令・国土交通省の資料をご確認のうえ、必要に応じて専門家へご相談ください。





