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BIMは義務化される?2026年開始のBIM図面審査と発注者が準備すべきこと

「BIMって、うちには関係ない話ですよね?」
建設プロジェクトの打ち合わせで、設計会社から「BIM」という言葉が出てきたものの、よくわからないまま話が進んでしまった。そのような経験を持つ総務・経営企画担当者の方も、少なくないのではないでしょうか。
「どうせ設計会社がやることで、うちには関係ない」——そう思っているとしたら、少し注意が必要かもしれません。
2026年4月から「BIM図面審査」が始まり、建築確認手続きにおけるBIM活用が本格化しつつあります。
この変化は、設計会社や施工会社だけの問題ではありません。発注者にとっても、業者の選び方、申請スケジュールの組み方、契約内容、竣工後の建物データ管理に関係します。
本記事では、建設の専門知識がない方にも理解できるよう、BIM図面審査の概要と、発注者が準備しておきたいポイントを解説します。
まず「BIM」を30秒で理解する
BIMとは、Building Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の略です。一言で表すと、コンピュータ上に建物の3次元モデルと関連情報を構築する仕組みです。従来の2次元CADでは、平面図、立面図、断面図などを個別に作成・管理することが一般的でした。
設計変更が発生した場合、それぞれの図面を修正する必要があるため、図面間で内容が一致しないといった問題が起こることがあります。BIMでは、建物を3次元モデルとして作成し、そのモデルをもとに図面を生成します。BIMモデルと連動して作成された図面であれば、モデルの変更内容を反映しやすく、図面間の不整合を減らすことができます。
また、建物の形状や寸法だけでなく、建材、設備、コスト、工程、維持管理情報などをモデルに関連づけることも可能です。
| 項目 | 従来のCAD(2D) | BIM(3D) |
|---|---|---|
| 図面の作り方 | 平面図・立面図・断面図などを個別に作成 | 3次元モデルをもとに図面を作成 |
| 設計変更時 | 関連する図面を個別に修正 | モデルと連動した図面に変更を反映しやすい |
| 管理できる情報 | 主に形状・寸法・図面情報 | 建材・設備・コスト・工程なども関連づけ可能 |
| 図面の整合性 | 図面間で不整合が生じる場合がある | 整合性を確保しやすい |
ただし、BIMを使用すれば、すべての情報が自動的に更新されるわけではありません。
2次元で追加した図面や、個別に作成した構造・設備モデルなど、BIMモデルと連動していない部分は手作業での修正や確認が必要になる場合があります。
2026年から何が変わったのか
国土交通省は、建築確認手続きのデジタル化とBIM活用を段階的に進めています。
建築確認とは
建築確認が必要な建築物について、工事着手前に、設計内容が建築基準関係規定に適合しているかを、特定行政庁または指定確認検査機関に確認してもらう手続きです。原則として、確認済証の交付を受ける前に工事を開始することはできません。
ここで、最初に押さえておきたい重要な点があります。
国土交通省は、BIM図面審査と、2029年に開始が予定されているBIMデータ審査について、いずれも任意利用とする方針を示しています。
現時点で、すべての建築確認申請にBIMデータの提出を義務づける予定はありません。
業界では「BIM義務化」という言葉が使われることがありますが、正確には、BIMを活用した申請方式の整備と普及が進められている段階です。
建築確認とBIM活用のロードマップ
2025年4月
署名や押印をせずに、建築確認手続きを電子的に行うことが可能になりました。また、全国の特定行政庁や指定確認検査機関が導入できる、共通の電子申請受付システムの運用も始まっています。ただし、紙による申請が廃止されたわけではありません。
実際に電子申請を受け付けているか、どの申請システムを使用するかは、申請先の機関によって異なります。
2026年4月1日
「BIM図面審査」が開始されました。BIM図面審査は、申請者が任意で選択できる申請方式です。対応している確認検査機関などに対して、BIMデータから作成したPDF図書とIFCデータを提出します。現在のBIM図面審査では、建築基準関係規定への適合性を審査する対象は、主にPDF図書です。IFCデータは、審査担当者が建物の形状や図面の内容を理解するための参考資料として活用されます。
2027年度以降
BIM図面審査に対応する機関や、利用できる環境の普及・拡大が進められる予定です。ただし、申請先によって対応状況が異なるため、実際にBIM図面審査を利用できるかは、事前に確認する必要があります。
2029年春予定
標準化されたBIMデータを審査に活用する「BIMデータ審査」の開始が予定されています。具体的な審査方法や提出物については、今後の検討によって変更される可能性があります。なお、BIMデータ審査についても任意利用とする予定であり、現時点でBIMデータ提出の義務化は予定されていません。
発注者に影響する3つの変化
「BIMは設計会社や施工会社の問題」と考える方もいるかもしれません。しかし、BIMを活用した建築確認手続きの普及は、発注者の業務にも関係します。
1.業者選定の確認項目が増える
設計事務所や施工会社によって、BIMへの対応状況や活用レベルは異なります。BIMソフトを導入していても、基本設計のみで使用している会社、施工段階まで活用している会社、確認申請や維持管理用データの作成まで対応できる会社など、対応範囲には差があります。
そのため、業者選定時には、単に「BIMに対応していますか」と質問するだけでは不十分です。
次のような項目を具体的に確認することが重要です。
- ・どの設計段階でBIMを使用するのか
- ・BIM図面審査への対応が可能か
- ・BIM図面審査の申請実績があるか
- ・竣工BIMデータを納品できるか
- ・使用するソフトウェアやデータ形式は何か
- ・BIM対応に追加費用が発生するか
BIM対応には、モデル作成費、申請対応費、データ変換費、竣工データ作成費などが別途必要になる場合があります。
見積依頼時に、BIM対応費用に何が含まれているかを確認しておきましょう。
2.申請スケジュールの事前確認が必要になる
BIM図面審査は、審査業務の効率化を目的とした制度です。ただし、BIM図面審査を利用すれば、必ず審査期間が短くなるとは限りません。申請先の確認検査機関がBIM図面審査に対応しているか、事前相談が必要か、どのようなIFCデータを提出するかなど、申請前に確認すべき事項があります。
また、申請者、設計者、審査機関が使用するシステムやデータ作成方法に慣れていない場合、追加の調整が発生する可能性もあります。
BIM図面審査を利用する場合は、次の点を早めに確認しましょう。
- ・申請先がBIM図面審査に対応しているか
- ・事前相談が必要か
- ・申請に使用するCDEや提出方法
- ・IFCデータの作成条件
- ・PDF図書とBIMモデルの整合性確認方法
- ・入出力基準適合誓約書の準備(設計者が対応。入出力基準に従いBIMデータを作成したことを申告する書類で、提出により審査者が一部の整合性確認を省略できる)
- ・申請前の社内・関係者チェックに必要な期間
プロジェクトごとの状況に応じて、余裕を持った申請スケジュールを設定することが大切です。
3.竣工後のBIMデータを建物管理に活用できる
BIMの活用効果は、設計や施工段階だけではありません。竣工後も適切に管理・更新されたBIMデータがあれば、改修工事や設備更新、製造ライン変更などを検討するときに活用できます。
例えば、次のような情報を確認しやすくなります。
- ・柱や梁の位置
- ・壁や床の構造
- ・配管・ダクト・電気配線の経路
- ・設備機器の設置位置
- ・設備機器の型番や製造会社
- ・点検・更新履歴
ただし、BIMデータを受け取るだけで、維持管理に活用できるわけではありません。維持管理に必要な属性情報が含まれていること、竣工時の状態が反映されていること、改修や設備更新後もデータが更新されていることが重要です。
また、BIM図面審査で確認検査機関に提出するIFCデータと、発注者が竣工後の維持管理に使用する竣工BIMデータは、目的や内容が異なります。
確認申請にIFCデータを提出したからといって、維持管理に使用できる竣工BIMデータが自動的に発注者へ納品されるわけではありません。
何も指定せずに発注すると、PDFなどの竣工図書のみが納品され、BIMデータは納品対象に含まれない場合があります。
発注者が今から準備しておきたい5つのこと
1.依頼先のBIM対応状況を確認する
設計会社や施工会社との最初の打ち合わせで、次の項目を確認しましょう。
- ・BIM対応ソフトを使用しているか
- ・どの工程でBIMを活用するか
- ・BIM図面審査に対応できるか
- ・BIM図面審査の申請実績があるか
- ・竣工BIMデータの納品が可能か
- ・データ形式、対象範囲、追加費用はどうなるか
BIM対応ソフトには、RevitやArchicadなどがあります。ただし、使用しているソフトだけで業者の対応力を判断するのではなく、過去の実績や社内体制、協力会社との連携方法まで確認することが重要です。
2.申請先の対応状況を早めに確認する
BIM図面審査を利用する場合は、基本設計や実施設計が進んでから確認するのではなく、計画の早い段階で申請先に相談しましょう。主な確認項目は次のとおりです。
- ・BIM図面審査を受け付けているか
- ・事前相談の時期と方法
- ・使用する電子申請システム
- ・CDEの利用方法
- ・提出するPDF・IFCデータの条件
- ・ファイル名やデータ容量などの提出ルール
申請直前になって提出条件が判明すると、図面やBIMモデルの修正が必要になる場合があります。
3.契約書に竣工BIMデータの納品条件を定める
竣工後もBIMデータを使用したい場合は、契約書、仕様書、EIRなどに納品条件を明記する必要があります。
具体的には、次の項目を関係者間で確認・合意しておきましょう。
- ・納品するデータ形式
- ・IFCデータのみか、ネイティブデータも含むか
- ・使用するBIMソフトとバージョン
- ・建築・構造・設備のうち、どこまでを納品するか
- ・竣工状態をどこまで反映するか
- ・維持管理に必要な属性情報を含めるか
- ・設計変更・施工変更時の更新方法
- ・データの検査・確認方法
- ・著作権・利用許諾の範囲
- ・データの改変や第三者提供の可否
- ・データ利用時の責任範囲
- ・データの保管期間
BIMデータには、設計者、施工者、設備業者、メーカーなどが作成した情報が含まれる場合があります。そのため、「すべての権利を発注者に帰属させる」と一律に決めるのではなく、発注者がどのような目的で、どの範囲まで利用できるのかを具体的に定めることが重要です。
国土交通省のガイドラインでは、発注者がBIMの利用目的や必要な情報をEIRで示し、受注者がBEPを作成したうえで、契約前に協議・合意する考え方が示されています。
著作権、利用許諾、改変、第三者提供、責任範囲についても、プロジェクトごとに契約書などで定めておきましょう。
4.社内のBIMデータ管理担当を決める
BIMデータを竣工後も継続して活用する場合は、社内の管理担当者を決める必要があります。総務部門、施設管理部門、情報システム部門など、建物情報を継続的に管理できる部門が担当することが考えられます。
社内では、次の内容を決めておきましょう。
- ・データの保管場所
- ・ファイル名とフォルダ構成
- ・閲覧・編集できる担当者
- ・バックアップ方法
- ・改修時の更新ルール
- ・最新データの確認方法
- ・外部業者へ提供する際の手続き
- ・ソフトウェアや閲覧環境の管理
BIMデータを受け取っても、社内の担当者や更新方法が決まっていなければ、古い情報のまま保管され、実際の建物と一致しなくなる可能性があります。
5.判断が難しい場合はCMに相談する
BIMの活用範囲、業者選定、申請方法、納品仕様などを、建設の専門知識がない担当者だけで判断することは簡単ではありません。このような場合は、コンストラクションマネジメントを活用する方法があります。
コンストラクションマネジメントは、発注者の立場で、建設プロジェクトのコスト、工程、品質、発注方法、業者選定などを支援する業務です。
BIMに関しても、次のような内容を相談できます。
- ・プロジェクトでBIMを使用する目的の整理
- ・設計会社・施工会社のBIM対応力の確認
- ・BIM対応費用の妥当性確認
- ・EIRやBEPの作成支援
- ・BIMデータの納品条件の整理
- ・竣工後のデータ活用方法の検討
社内だけで判断することが難しい場合は、CM会社やBIMに詳しい専門家への相談も選択肢の一つです。
工場・倉庫建設でBIMの活用が期待される場面
工場や物流倉庫は、製造設備、配管、排気ダクト、電気設備など、多くの設備が建物内に配置されます。そのため、BIMの活用効果が期待できる場面が多い建築用途です。
配管・ダクト・構造体の干渉確認
工場では、梁、配管、ダクト、ケーブルラック、生産設備などが複雑に配置されます。設計段階で十分な確認が行われていないと、施工開始後に次のような問題が判明することがあります。
- ・配管と梁が干渉している
- ・ダクトを予定位置に通せない
- ・設備と建物構造が接触する
- ・メンテナンススペースが不足している
- ・設備が搬入口や通路を通らない
BIMモデル上で事前に干渉確認や施工シミュレーションを行うことで、これらの問題を設計段階で発見・修正しやすくなります。
製造ライン変更や増設への活用
工場では、生産品目の変更、増産、新設備の導入などにより、竣工後も改修・増設が行われることがあります。実際の建物状態を反映した竣工BIMデータがあれば、既存の柱、梁、壁、配管、ダクトなどの位置を確認しながら、改修計画を検討できます。現地調査が不要になるわけではありませんが、調査範囲を絞り込み、設計作業を効率化できる可能性があります。
維持管理・設備更新への活用
設備機器の型番、設置日、メーカー、点検周期などをBIMモデルに関連づけておけば、設備管理にも活用できます。ただし、維持管理に使用するためには、設計・施工段階から必要な情報を定めておく必要があります。竣工後になってから情報を追加しようとすると、再調査やデータ入力に多くの手間がかかる可能性があります。
「BIM義務化」という言葉が使われることがありますが、国土交通省は、2026年に開始されたBIM図面審査と、2029年に開始予定のBIMデータ審査について、いずれも任意利用とする方針を示しています。現時点で、すべての建築確認申請にBIMデータの提出を義務づける予定はありません。一方で、BIMを活用した建築確認手続きの整備と普及は、今後も進むと考えられます。
発注者にとって重要なのは、単に制度変更へ対応することではありません。自社の建設プロジェクトでBIMを何に使用するのかを整理し、必要な業務、費用、データ形式、納品条件を発注前に明確にすることです。
| タイミング | 発注者が確認・準備すること |
|---|---|
| 計画初期 | BIMを使用する目的と必要性を整理する |
| 業者選定時 | BIM対応範囲、実績、追加費用を確認する |
| 申請準備時 | 申請先の対応状況と提出条件を確認する |
| 契約時 | 竣工BIMデータの形式・範囲・利用条件を定める |
| 竣工時 | 納品データが契約条件を満たしているか確認する |
| 竣工後 | 社内の保管・更新・利用ルールを整備する |
BIMを導入すること自体を目的にするのではなく、設計、施工、改修、維持管理のどの段階で活用するのかを明確にすることが重要です。
AGECは、発注者の立場に立ったコンストラクションマネジメントとして、工場・倉庫・物流施設などの建設プロジェクトを支援しています。建設計画、業者選定、コスト、工程、品質管理などについて、発注者側からプロジェクト全体をサポートします。
※本記事の制度情報は2026年7月時点のものです。今後の国土交通省の検討や制度変更により、審査方法や提出条件などが変更される可能性があります。実際に申請を行う際は、国土交通省の最新情報および申請先の特定行政庁・指定確認検査機関の案内をご確認ください。





