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非常用電源はどこまで必要?工場・倉庫で停電時に守る設備・止める設備の決め方

非常用電源は「建物全部を動かす」ための設備ではない
地震や台風、設備事故などによって停電が発生した場合、工場や倉庫では生産・出荷・保管機能が停止する可能性があります。そのため、BCP対策として非常用発電機や蓄電池を検討する企業は少なくありません。
しかし、非常用電源を計画する際に、「通常時と同じように建物全体へ電力を供給できる容量を用意すればよい」
と考えると、設備が過大になり、初期コストや維持管理費が大きくなる場合があります。重要なのは、停電時に絶対に止めてはいけない設備と、一時的に停止できる設備を分けることです。
本記事では、工場・倉庫における非常用電源の考え方と、発注者が「守る設備」「止める設備」をどのように整理すべきかを解説します。
まず「何時間事業を維持したいか」を決める
非常用電源を検討する前に、最初に決めるべきなのは発電機の容量ではありません。「停電してから、どの機能を何時間維持する必要があるか」という事業継続上の目標です。
例えば、
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・従業員が安全に避難するまで
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・商品を安全な状態で保管できるまで
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・生産設備を安全に停止するまで
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・外部電源が復旧するまで
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・代替工場・倉庫へ切り替えるまで
では、必要な電源容量も運転時間も大きく異なります。国土交通省の業務継続に関する指針でも、非常用発電機について必要な電力供給能力だけでなく、燃料備蓄を含めた運転可能時間を確認する考え方が示されています。
したがって、「非常用発電機を何kWにするか」ではなく、「停電時に何をどこまで維持するか」から逆算することが基本です。
工場で「守る設備」は何か
工場では、すべての生産設備を非常用電源で運転することが現実的とは限りません。まず、停止すると人命・設備・製品に大きな影響が出る設備を抽出します。
優先度が高くなりやすい設備
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・防災設備・非常照明
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・危険物や薬品を安全に停止する設備
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・制御盤・監視システム
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・冷却設備
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・排気・換気設備
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・給排水設備
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・サーバー・通信設備
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・生産設備の安全停止に必要な補機
例えば、生産ライン本体を動かすほどの電力は確保できなくても、制御システムや冷却ポンプだけを維持できれば、設備や製品への被害を抑えられる場合があります。
化学品や危険物を取り扱う工場では、停電時に設備を「動かし続ける」ことよりも、安全な状態まで停止させるための電源が重要になることもあります。
倉庫で「守る設備」は何か
倉庫では、保管している商品と物流システムによって優先順位が異なります。例えば常温倉庫と冷凍冷蔵倉庫では、停電による事業影響が大きく異なります。
優先度が高くなりやすい設備
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・非常照明・防災設備
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・冷凍・冷蔵設備
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・WMS・通信設備
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・サーバー・ネットワーク
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・自動倉庫の制御設備
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・防犯・入退室設備
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・必要最低限のシャッター・搬入口設備
特に冷凍・冷蔵倉庫では、電源停止が長時間続くと保管商品の品質に直接影響する可能性があります。
一方、自動倉庫については、設備全体を非常用電源で運転させるのではなく、
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・搬送中の商品を安全な位置へ移動する
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・制御システムを正常終了する
-
・復旧後にシステムを再起動できる状態を維持する
といった最低限の機能を確保する考え方もあります。
「止める設備」を決めることもBCP
非常用電源計画では、何を動かすかだけでなく、何を止めるかを明確にすることも重要です。
例えば、
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・一般空調
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・非重要エリアの照明
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・事務所の一部設備
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・通常時のみ必要な搬送設備
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・優先度の低い生産ライン
などは、一時的に停止する判断が可能な場合があります。停電時にすべての設備へ電力を供給しようとすると、大容量の発電設備が必要になり、設備投資も大きくなります。
そのため、
| 分類 | 考え方 |
|---|---|
| A:必ず維持 | 人命・防災・重大事故防止に関係 |
| B:できれば維持 | 商品・設備・業務継続に大きく影響 |
| C:安全停止 | 停電時に安全に停止できればよい |
| D:停止可能 | 電源復旧後に再開できる |
のように優先度を整理すると、必要な非常用電源を検討しやすくなります。
非常用電源は「容量」だけでなく「時間」も重要
十分な容量の非常用発電機を設置していても、燃料が不足すれば運転を続けることはできません。
そのため確認したいのは、
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・発電機の定格容量
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・実際に接続される負荷
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・燃料タンク容量
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・想定運転時間
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・燃料補給方法
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・災害時の燃料調達ルート
です。防災拠点となる建築物では72時間の機能継続を想定した事例もありますが、これは工場・倉庫すべてに一律に適用される基準ではありません。施設用途やBCP上の復旧目標に応じて個別に設定する必要があります。
特に大規模災害では道路寸断や燃料供給の混乱も考えられるため、「燃料を後から補給すればよい」という前提だけで計画しないことが重要です。
発電機だけでなく蓄電池・太陽光も組み合わせる
非常用電源というとディーゼル発電機をイメージしやすいですが、施設によっては蓄電池や太陽光発電を組み合わせる方法もあります。
例えば、
非常用発電機
長時間・比較的大容量の電力供給に向いています。
蓄電池
停電直後の瞬時切替や、サーバー・制御設備などのバックアップに適しています。
UPS
制御システムやIT設備など、瞬断を避けたい機器に使用します。
太陽光発電
非常時の補助電源として活用できる場合がありますが、停電時に使用するには自立運転機能や蓄電池との組み合わせなど、システム構成の確認が必要です。
国土交通省の機能継続事例でも、非常用発電機、太陽光発電、外部電源車の接続など複数の電力供給手段を組み合わせた事例が紹介されています。
「発電機がある」だけでは使えないこともある
既存工場・倉庫で特に注意したいポイントです。
非常用発電機が設置されていても、
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・必要な設備へ配線されていない
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・発電容量に対して接続負荷が大きすぎる
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・長期間試運転していない
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・燃料が十分に確保されていない
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・バッテリーが劣化している
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・設備更新後に負荷計算を見直していない
といったケースでは、災害時に期待した性能を発揮できない可能性があります。消防用設備などに用いる自家発電設備については法令上の点検基準も設けられており、消防庁も自家発電設備の定期的な点検について周知しています。
BCP用途の非常用電源についても、設置後に放置せず、定期的な試運転と負荷条件の確認が重要です。
工場・倉庫で確認したいチェックポイント
非常用電源を計画・見直す場合は、次の項目を整理します。
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・停電時に維持すべき重要業務を決めている
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・守る設備・安全停止する設備・停止可能設備を分けている
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・非常用発電機の容量を把握している
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・接続されている設備を把握している
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・必要な運転時間を設定している
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・燃料備蓄量を把握している
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・災害時の燃料補給方法を確認している
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・UPSや蓄電池が必要な設備を整理している
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・冷凍冷蔵設備の停電時対応を決めている
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・自動倉庫・生産設備の安全停止方法を確認している
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・定期的に非常用発電機を試運転している
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・設備増設後に電源容量を再確認している
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・復電時の再起動手順を決めている
特に既存施設では、建設当初から設備が増えている場合があります。その場合、当初設計した非常用電源容量と現在必要な容量が一致しているとは限りません。
新築・改修時は「重要負荷リスト」を作る
非常用電源を検討する際に有効なのが、停電時に必要となる設備をまとめた「重要負荷リスト」です。
例えば、
| 設備 | 必要電力 | 優先度 | 必要時間 | 停止方法 |
|---|---|---|---|---|
| 防災設備 | 個別確認 | A | 継続 | 継続運転 |
| サーバー | 個別確認 | A | BCPによる | UPS+発電 |
| 冷却ポンプ | 個別確認 | A | 設備条件による | 継続運転 |
| 生産ライン | 個別確認 | C | 安全停止まで | 停止 |
| 一般空調 | 個別確認 | D | 不要 | 停止 |
といった形で整理します。数値は設備仕様によって大きく異なるため、実際の容量は電気設計者や設備メーカーによる負荷計算が必要です。
重要なのは、発電機を選んでから接続設備を決めるのではなく、事業継続上必要な設備を決めてから発電設備を選定することです。
CMを活用して「設備」と「事業継続」をつなげる
非常用電源の検討では、電気設備だけを見ても適切な計画にならない場合があります。
例えば、
「生産設備を動かしたい」
と考えても、給水設備や圧縮空気、冷却設備が停止していれば運転できないことがあります。
倉庫でも、自動倉庫へ電源を供給していてもWMSや通信設備が停止していれば出荷できません。
そのため、
電気設備 → 生産・物流設備 → 業務プロセス
まで横断して確認する必要があります。
工場・倉庫の非常用電源は、「大きければ安心」というものではありません。
重要なのは、停電時に何を守るのか、何を安全に停止するのか、何を一時的に諦めるのかを事前に決めておくことです。
発注者が押さえておきたいポイントは次の3つです。
① BCP上の重要業務から逆算する
発電機容量ではなく、維持すべき業務・設備から検討します。
② 容量と運転時間をセットで考える
必要電力だけでなく、燃料備蓄や補給方法も確認します。
③ 建物設備と生産・物流設備を一体で確認する
電源だけ確保しても、関連設備が停止すれば事業を継続できません。
非常用電源は単なる防災設備ではなく、工場・倉庫の事業継続を支える重要なインフラです。
新築時だけでなく、設備増設やBCP見直しのタイミングでも、現在の運用条件に合った計画になっているか確認することが重要です。
AGECでは、工場・倉庫・物流施設について、発注者の立場からコンストラクションマネジメント(CM)を提供しています。
非常用電源を含むBCP設備の整理、重要負荷の確認、既存設備の増強計画、設備会社との調整、工事費・工程の精査、操業を維持しながら行う改修計画まで、施設の状況に応じて支援します。
「現在の非常用発電機でどこまで設備を動かせるのか分からない」「BCPを踏まえて電源設備を見直したい」といった場合は、ご相談ください。
※本記事は2026年8月時点の一般的な工場・倉庫における非常用電源・BCPの考え方を解説したものです。必要な電源容量、運転時間、燃料量、法令上必要となる非常電源は、建物用途、設備内容、消防設備、事業継続計画などによって異なります。具体的な計画については、電気設備設計者、設備メーカー、消防その他の専門家による個別検討を行ってください。





